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2025/12/05 19:00

<対談>14歳の新星Neil&HY新里英之の特別な出会い、沖縄がつないだ世代のハーモニー

 沖縄アクターズスクール所属のシンガー/ダンサー、Neilが2ndミニアルバム『STAIRS』をリリースした。タイトルに込められた「子供から大人へ、一人の音楽人として、人間として成長していく階段」というコンセプトのとおり、14歳の若き才能は、今まさに上昇し続ける“成長”そのものをエネルギーに変えている。

 今作には、沖縄が生んだ先輩ミュージシャン・HYの新里英之とのデュエット曲「いちばん近くに」も収録。NHK連続テレビ小説『純と愛』の主題歌として2012年に発表されたHYの名曲が、Neilの声によって新たな息吹を得た。年齢差28歳という異色のタッグながら、互いに刺激を受け合い、吸収し合ったという。ミュージック・ビデオ撮影滞在先の沖縄・東屋慶名と東京をオンラインでつなぎ、このコラボ誕生の裏側をたっぷり語ってもらった。

――現在、そちらでMV撮影中とのことですが、現場の雰囲気はいかがですか?
Neil:古民家で撮影してまして、とってもいい画が撮れていると思います。沖縄の良さが、ひでさんと「いちばん近くに」で表現できそうな気がします。

新里英之:瓦屋根の下であたたかい画が撮れたよね。しかも、ここは自分たちHYの地元・東屋慶名なんです。僕が小学生の頃に自転車で走り回っていた場所なので、いろいろ思いながら撮影しました。息子ではないけど、どこか親目線でNeil君の味方として歌っている自分がいて、今までとは違う「いちばん近くに」の伝え方ができる気がします。

――リリース当時ともまた違う感情で今回歌われていると思いますし、比べてみても、まったく違う作品に仕上がっています。
新里:そうですよね。ウクレレの寂しくもあり、あたたかい音色に乗せてNeil君の歌い出しから始まって、もう別物の、しかもNeil君の曲になっています。Neil君の同世代にも響くものがあると思う。Neil君がこの曲で沖縄を見つめて、ここから飛び立っていくという話を聞いていたので、そこにもすごくマッチしていると思います。

――Neilさんは、この曲の完成度についてどんな手応えを感じていますか?
Neil:カバーさせてもらえること自体、すごく嬉しくて、たくさん練習しました。(仲宗根)泉さんのパートにNeil節を入れたかったのと、ウクレレ一本にすることでよりこの曲を届けられると思って、ひでさんにはアレンジを加えることにご理解いただき、アドバイスももらいながらメロディーを完成させました。最高の作品になりました!

――数あるHYの楽曲の中で、なぜこの曲を選ばれたのでしょうか?
Neil:なんといっても歌詞がクリーンヒットしたんです。歌詞に惚れました。東京に行く機会が増えて、ホテルでひとりで過ごしていると、沖縄にいる家族や友達を思い出して。寂しく感じていたときにこの曲を聞いたんです。寂しさを歌うというよりは、「いちばん近くに」の歌詞を誰かに伝えるイメージで歌いました。マイクを誰かの耳に例えて、そっと伝えるイメージです。歌詞の深さと、家族でも友達でも恋人でも、いろんな人たちに届けられる点から、この曲に決めました。

新里:いつもそばにいる家族や友達のもとを離れて、その人たちの愛を改めて汲み取ることができたから、この歌がNeil君に突き刺さったんじゃないかな。Neil君は感じているその思いをこの曲に全部吐き出せたようにも思います。同じように故郷を離れて頑張っている人たちにメッセージを伝えたいっていう気持ちがあったから、誰かに“届けたい”っていう歌に切り替わったんじゃないかなって、Neil君の話を聞いて僕はそう思いました。「いちばん近くに」っていうタイトルにしたのも、いつも近くにいる人を当たり前に感じて、ふとした瞬間にその人がいなくなったときにその有難さを感じて、今そばにいる人を大切にしてほしいという思いがあったからです。〈ねぇ初めて出逢った日の事 あなたは覚えてる?〉っていう歌詞のように、好きな人に出会った最初の頃の胸の高鳴りをずっと持ち続けることは簡単なことではないけど、初心を忘れずに、何度も振り返ることが大切だと歌っています。

――新里さんはこの曲でNeilさんをどう支えようと思いましたか?
新里:支えるというよりも、Neil君から僕がパワーをもらいたかったんです。初めてオファーをいただいたとき、スケジュールが詰まってて、2回目のオファーのときもちょっと忙しすぎてお断りしようと思っていたんです。でも、当時僕がダンスを習っていて、そのダンススタジオにNeil君も通っていたことを知った瞬間、この縁が僕をどこかへ導いてくれるかもしれないって思って、マネージャーに「僕ひとりでもよかったら、やりたいです」って返信しました。パワーを交換することですごい力が生まれるかも、原曲とは違う新しいものを生み出せるんじゃないかっていう期待でいっぱいでした。

Neil:こんな話、ここで初めて聞きました、僕……。ありがとうございます!

新里:「366日」とかほかの曲をカバーしてくださることはよくあるんですけど、まさか「いちばん近くに」を選ばれるとは思わなかったです。僕たちはこの曲で『紅白』に出場することもできたし、朝ドラを通して老若男女に届けることができた大切な曲です。今回、Neil君がこの曲をまた輝かせてくれて、ありがとうの気持ちでいっぱいです。『純と愛』から始まった曲ですけど、その影はもはやなくなり、彼の曲になっています。歌声を聞くだけで物語が勝手に膨らんでいく、そういう魅力が彼の歌声にはあって、それは僕と泉にはない世界観です。

――ウクレレとおふたりの歌声に聞き入ってしまいました。
Neil:ギターにする話もあったんですけど、ウクレレを選んで正解だと自分でも思います。

新里:ウクレレで思い出した。Neil君から「1サビはカッティング多めにしてもいいですか?」ってアドバイスを求められたとき、めちゃくちゃ嬉しかったんです。実はこういうのが夢だったんですよ。HYでたくさんのプロデューサーと関わって、いろんな方の背中を見て勉強してきたので、いつかそういうことを僕もやりたいと思っていました。Neil君から「どう演奏したらいいでしょうか?」って聞かれたときは、「これこそ僕が求めていた風景だ!」って。1サビでは手数を抜いて、Neil君の歌声を聞いてもらうアイデアを出しました。

Neil:ひでさんのアドバイスは的確だと思いました。1サビで盛り上がるところをあえて1コールで終わらせることでうるさくならず、ウクレレの音も歌詞も自然と心に入ってくる。これは本当に最高です。ありがとうございます!

新里:Neil君も僕も互いに「なにかちょうだい」「吸収させて」っていう気持ちだったから、そこから色々とアイデアが生まれたよね。ラストサビ〈私だけが知ってる~〉に追っかけを入れてみたらいいかも、と思って提案したら「Neilもそれ思ってた!」って。で、僕はフェイクが下手だから、Neilに教えてもらいました。今までの僕にはない歌声を残すことができて感無量です。

Neil:1番を一人で歌うことに不安があったんですけど、ひでさんが「俺は2番から入ったほうがいいと思う」っておっしゃって、ひでさんのコーラスとハモリが入った瞬間、曲が変わって、「やば!」って鳥肌が立ちました。

新里:逆に僕も指示してもらったんです。原曲で声を張って歌うところをNeilに合わせて歌ってみたり、地声で歌ってほしいとリクエストをもらったり。僕のいいところを伸ばしてくれた気がして、いい経験でした。あざっす!

――レコーディング前からNeilさんの中でしっかりイメージがあったんですね。
Neil:ありました。泉さんのパートに僕らしさを出すためにどうしたらいいか考えてましたし、東京に来る飛行機の中でもずっと聞いてました。聞けば聞くほど「こうしたい」っていうのが増えてきて、ウクレレのアレンジも含めて、レコーディングがすごく楽しみだったんです。

新里:14歳という年齢だから出せるかわいらしさ、そして夢に向かって進んでいく決意みたいなキラキラしたものもウクレレから伝わってきて、ミュージック・ビデオからも伝わるんじゃないかと思います。

――昨年8月のデビューから1年が経ちましたが、どんな時間でしたか?
Neil:この1年ではやっぱり体の成長を実感しています。中学2年生になってから声変わりが始まって、前のアルバムの曲が全部、地声で歌えなくなっちゃって。聞く音楽も変わって、宇多田ヒカルさんとか女性ボーカルの曲をよく聞いていたんですけど、今は男性ボーカルのものばかりです。今も進行形で成長していて、音域がもう少し落ち着いたら、声にも大人っぽさが出て、成長したNeilをライブで届けられると思うので、ポジティブに考えています。この曲が入った『STAIRS』には大人になっても歌えるというか、歌っていきたい曲が入っています。

――その『STAIRS』はどんな作品に仕上がりましたか?
Neil:前作から大人になった姿や、異なるジャンルにも注目してもらいたいです。リード曲の「恋バグ」は僕が作詞と作曲をした曲で、過去一踊っていると思います。ほかにもORANGE RANGEさんの「キズナ」を沖縄アクターズスクールの仲間(B .Rox)とカバーしていて、尊敬する沖縄のアーティスト2組の曲をカバーさせていただき、すごく光栄です。「キズナ」は事前に自分でコーラスやフェイクを作って、デモを準備したので、そこでも自分を成長させることができました。

――ちなみに、新里さんは14歳の頃、すでに音楽の道に進みたいと思ってましたか?
新里:14歳はちょうどアコギを触り始めた頃ですね。小学3年生から中学2年生までバスケをやってたんですけど、ギターに夢中になってしまって、すぐにバスケをやめました。ギターに出会ったのもHYのメンバーたちがきっかけです。僕は音楽の道に進みたいっていうより、このメンバーと一緒にいたいっていう気持ちが大きかったです。

――音楽の先輩としてNeilさんにアドバイスするとしたら?
新里:実は最近、ファンの方からデビューの時より歌が上手くなってるって言われるんですよ。それは僕も感じていて……今、一番高い声が出せているんです。すごく絶好調なんですよ。

――絶好調な理由はわかっているんですか?
新里:ノーストレスに尽きる! 考えすぎないことですね。あと、自信や経験が物を言うというか。目標や憧れを見つけて勉強し続けることも大切だし、ゴールに着いても終わりではないですね。あと、HYのメンバー全員、向上心が高いので、彼らについていくために自分も成長させようとまだまだ努力することもあります。経験が声に表れると思います。

Neil:ストレスか……

新里:そういうこと考える年齢じゃないよね(笑)。例えば、喉を気にしすぎて、加湿器をたくさん炊いた部屋で寝ると、喉にはいいけど眠りづらいわけ。そうすると睡眠の質が下がって、すべてがダメになる。それよりも、仕事や音楽から少し離れたほうが効果的なんだよね。こういう悩みができたら、先輩たちからいろいろ話を聞いてみるといいよ。

Neil:ひでさんのストレス発散方法はなんですか?

新里:海を見るのも好きだけど、やっぱりライブが一番かな。“発散”ではなくて、ストレスを忘れさせてくれるぐらいのパワーをもらえるから。

Neil:ライブ最高ですよね。

――ライブといえば来年3月のHY主催の野外フェス【HY SKY Fes 2026 & Special Night】にNeilさんが出演されますね。
Neil:イエーイ! ありがとうございます!
新里:当日はこの曲を歌うのか、僕も気になっているよ。
Neil:できるなら歌いたいです。
新里:僕たち二人で歌おうよ。そこに(名嘉)俊がドラムで入ったりしてね(笑)。

Text & Interview: Mariko Ikitake

◎リリース情報
『STAIRS』
2025/11/19 RELEASE
WPCL-13730 1,980円(tax in.)
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